日本語の動詞に意志動詞と無意志動詞

最近、日本語の動詞に意志動詞と無意志動詞という区分を用いる観点があるのを知りました。
この区別と同形同士のペアの区別を、日本語における自動詞と他動詞として解説しているサイトは多いのですが、確かに意志の有無と照らし合わせるとピッタリ対応しているように思えました。

自分の現在のコレクションです。

類型 non-volitional:volitional or intransitive:transitive stem
-areru:-asu 壊れる:壊す kow-
-aru:-asu 回る:回す maw-
-aru:-eru 変わる:変える ka-/kaw-
-aru:-eru 閉まる:閉める shim-
-aru:-eru 決まる:決める kim-
-aru:-eru 止まる:止める tom-
-aru:-eru 浸かる:浸ける tsuk-
-aru:-eru 見つかる:見つける mitsuk-
-aru:-eru 始まる:始める hajim-
-aru:-eru 集まる:集める atsum-
-aru:-eru 温まる:温める atatam-
-aru:-eru 上がる:上げる ag-
-aru:-eru 静まる:静める shizum-
-eru:-asu 出る:出す (出るは意思を感じる用法もありそう) d-
-eru:-asu 溶ける:溶かす tok-
-eru:-asu 冷える:冷やす hi-/hiy-
-eru:-asu 増える:増やす hu-/huy-
-eru:-u 切れる:切る kir-
-eru:-u 割れる:割る war-
-eru:-u 折れる:折る or-
-eru:-u 破れる:破る yabur-
-eru:-u 焼ける:焼く yak-
-eru:-ru 煮える:煮る ni-
-ieru:-esu 消える:消す k-
-iru:-asu 伸びる:伸ばす nob-
-iru:-osu 起きる:起こす ok-
-iru:-osu 落ちる:落とす ot-
-iru:-osu 過ぎる:過ごす sug-
-u:-asu 沸く:沸かす wak-
-u:-asu 動く:動かす ugok-
-u:-eru 開く:開ける ak-
-u:-eru 付く:付ける tsuk-
-reru:-su 倒れる:倒す tao-
-reru:-su 汚れる:汚す yogo-
-ru:-su 帰る:帰す kae-
-ru:-su 直る:直す nao-
hairu:ireru 入る:入れる(両方とも意思があるので対応が崩れている?但し自動詞と他動詞という見方だと対応しているようにも見える) hairu/ireru


ここに着目して、いつもの「より適切な識別子名を選ぼう」を追求していくと面白い知見が得られました。
それとは関係ない知見も得られました。

日本語の意志動詞『倒す』及び無意志動詞『倒れる』に近似する英単語を探した場合の備忘録。

  • 意志動詞『倒す』及び無意志動詞『倒れる』に最も近似すると考えられる英単語は adverb の "down" なのではないか?
  • "down" は (verb ではなく) adverb なので他の動詞が要る。
  • 動詞一語で対応が比較的強そうな語として "collapse" が見つかった。
  • 但し "collapse" は『倒す』、『倒れる』の意味より『崩れる』の意味が先行しているように見える。
  • また "collapse" はラテン語系の単語なのでゲルマン語系の単語であろうと推測される "down" と組み合わせると不自然さが生じる可能性を考慮するべきだろう。
  • "collapse" には transitive verb としての用法と intransitive verb としての用法の両方がある。
  • intransitive verb としての "collapse" には、「病に倒れる」などの場合の無意志動詞『倒れる』に相当する用法がある。
  • transitive verb としての "collapse" にも意志動詞『倒す』に相当しそうな用法がありそうだ。
  • 但し transitive verb としての "collapse" を日本語に訳すときには受け身の『倒される』が適切なように思えた。
  • この場合でも transitive verb としての "collapse" は passive voice にはなっていないように見える(英語の passive voice に be 動詞が必須であると考えた場合)。

例文(作文したのでネイティヴの方からみたら不自然かもしれない):
The blast of the wind collapsed the tower.

古代ギリシアで人類史上最初期に動詞を分類したと思われる時点で transitive, intransitive, passive の三種類に分けられてたらしいので、
意志動詞と無意志動詞のペアに対して更に受け身がペアでくっつくイメージでしょうか。
本当に学びは一生終わりません。